シッキムへゴー!

     前日にインドに入国し、疲れていたこともあって、10時間ほど眠った。
    朝、7時半のバスがあると聞いていたので、それに間に合うように、準備をして、宿を出て、SNTバスターミナルへ向う。バスターミナルへは、宿から徒歩で、2分くらいだった。
    行き先は、ガントクではなく、州境の街、ランポー(Rangpo)だ。
    ここで、シッキム州のパーミット(旅行許可書)を取って、ガントクへ行く。

    しかし、バスの出発は、午前7時発だったらしく、次のバスの出発は、午前8時半だということなので、そのバス切符を買ったあと、時間を持て余してしまった僕は、屋台のチャイ屋で、2Rs(約5円)のチャイをすすりながら、時間を潰していた。

    まだ出発には、時間があるが、すでにバスが停車していたので、バスに乗り込むが、車内は蒸し暑い。
    外の方がまだ、涼しいので、外で待つことにして、出発時間が近くなると、僕はバスに乗り込んだ。
    そして、バスは時間通り、午前8時半に、シリグリを出発した。
    僕は、インドのバスや電車など、交通機関の時刻は、あってないようなものだと聞いていたので、この時間通りに出発したバスに驚いた。

    ガントクの街並み

    バスは十数分走り、シリグリの街を抜けると、緑溢れた、清々しく気持ちの良い山道へと景色を変えた。
    何だか、自然の中に身を置くと、ものすごく癒される。
    シッキムは、どんな所なんだろうか?

    バスは、1回の休憩を入れて、出発から約3時間半後に、ランポーに到着した。
    早速、パーミットを取りに、チェックポストへと向かった。
    用紙に、名前、国籍、パスポート番号を記入して、15日間のパーミットをあっさりと取得。(無料)
    これは、ガントクで、さらに延長もできる。

    橋の側のバス停で、バスを待つが、なかなか来なくて、先に来た、乗り合いジープに乗って、ガントクへ。
    見える景色は、緑が溢れ、キレイで、しかも人も親切だ。
    僕は、インドは、もっと汚くて、ウザイと思っていたが、どうやらシッキムは、そんな所では、なさそうだ。
    そして、ジープは、ガントクの乗り合いジープ乗り場に到着した。

     ここ、シッキム州は、1975年にインドに併合されるまでは、シッキム王国という国でした。
    シッキムは、ヒマラヤ山脈の麓、ネパールとブータンの間に存在した国で、インドからチベットへの玄関口にあたる戦略的、または、交易に重要な場所で、その州都が、以前は首都だった、標高1,547mの街、ガントク(Gangtok)です。

    左:坂道が続く商店街 右:映画館の前

    ガントクの街は、山の斜面にへばり付いたような街で、坂が多く、今まで見たこともない、街の造りだ。
    「坂が多くて、しんどそー。」これが、僕のガントクの第一印象。
    そして、リュックを背負った僕は、M.G.MARG(通りの名前)へ目指して歩いた。
    この通りに、宿が集中しているからだ。

    数軒の宿を見てまわるつもりだったが、一軒目の『GREEN HOTEL』(1泊=200Rs)に落ち着いた。
    早速、リュックから、コーヒーを取り出し、コイルヒーターでお湯を沸かして、コーヒーを作って、ホッと一息ついた。やっと、落ち着いたって感じだ。

     この旅を計画した時点では、シッキムへは、行くつもりじゃなかった。
    しかし、ネパールに着いた頃には、隣だし、シッキムへ行く機会なんて、もう二度とないかもと思っていたし、チベット文化圏でもあるしと、これから、日程的にも、経済的にも、厳しくなるが、この機会を逃したくはなく、シッキム行きを決めた。

     ガントクの街は、山の斜面に作られているだけあって、予想通り、坂が多く、階段の上り下りの繰り返しで、歩くのが、しんどい所です。
    人々は、チベット系やネパール系が多く、一般的な、インド人だ!っていう感じの人は、少ない。
    街は、ゴミが少なく清潔で、景色も良く、冬には、ヒマラヤも望める。
    今は、夏で、雲も多く、オフシーズンのため、近くの風景しか見えません。
    それでも緑溢れる気持ちの良い、風景です。
    こんな景色が見える宿で、コーヒーでも飲みながら、ボケッとしたら、気持ちいいだろうなと思い、見晴らしの良い宿をいくつか見てみたが、どこも値段が高かったので、断念しました。


    それと、インドでは、酒がなかなか飲めないと聞いていたが、ここシッキムは、別で、食堂へ行けば、ビールは飲めるし、酒屋もたくさんあります。
    早速、ジンを買ってしまった。ネパールよりも安かったし。
    M.G.MARGは、夜になると、歩行者天国へと変わり、通りには音楽が流れている。
    何か、ガントクって素敵なところです。

     翌日、天気は晴れ。ブラブラと歩いていたら、王宮近くのツクラカンに着いた。
    お堂の外では、これからお祭りが始まるのだろうか、人々は、赤い玉のような物を作っている。
    僕は、お堂の中へと入り、僧侶達が奏でる、プジャを聞いていた。
    こういうとき、チベットでは、バター茶が出されたりするが、ここでは、なんと、リンゴジュースが出てきました。しかも嬉しいことに、冷たい。

    一度、宿に戻り、少し休憩をした後、街の上に位置する、エンチュ・ゴンパへと向かった。
    まるでハイキングのような道のりを歩き、汗だくの状態で、到着。
    エンチュ・ゴンパでは、子供僧侶達が、仏教の勉強なのだろうか、しっかりと黒板に向かっている子供もいれば、ノートにシールを貼って遊んでいる子供もいて、真面目なのか?不真面目なのか?

    左:エンチュ・ゴンパ 右:トルマを作っている僧侶

    他の所へ行くと、トルマを作っている、僧侶がいたので、つたない英語で、話しかけてみた。
    僧侶が言うには、明日は、グル・リンポチェ(ニンマ派の開祖)の誕生日で、お祭りがあるから、作っていると言う。
    そして、お祭りとは、どんなことをするの?と聞くと。
    ただ、プジャをするだけだと言っていた。

     さらに次の日には、カルマ・カギュ派の総本山、ルムテク・ゴンパへと乗り合いジープに乗って、行った。
    さすがに警備が厳しく、警備員もいるし、荷物もチェックされた。
    案内役の僧侶も付かされ、見学。
    カルマパ16世の家や、いくつかのお堂を案内されたが、印象に残っているのは、廃墟となった、カルマパ16世の家だった。
    帰りも、24Rs払って、乗り合いジープに乗って、ガントクへと戻った。

    その日の午後、宿のスタッフが、僕を呼びに来た。
    客が、来ていると。
    「もしかして、ko君?」と僕は、部屋を出て、階段を下りると、10日ぶりくらいだろうか?
    そこには、ko君の姿があった。(ko君については、『嘆きの大地』を参照)
    再会を喜んだ僕達は、早速、食堂へ行き、昼真っからシッキム名産のヒットと言う名のビールを飲み、飲んだくれた。


    ルムテク・ゴンパ




緑生い茂る、標高3780m(ツァング湖へ)

 今日は、ガントクから東に約40kmほどのところにある、ツァング湖へ行きます。
ツァング湖は、一山越えれば、中国チベット自治区という国境付近の場所にあるため、個人では、行くことが出来ず、ko君と二人で、ツアー(1人=450Rs)という形で行くことにした。

ツァング湖ツアーは、日帰りしかなく、旅行会社やゲストハウスなど、あちこちで取り扱っている。
値段は、各店バラバラだが、だいたい400Rs〜450Rsくらいだったと思う。
その差は、1時間の散歩が付いているか、付いていないかくらいの差でした。
申請書に写真を貼って、パスポートのコピーを提出すれば、翌日には、行けることになっているはず。
僕達も、前日に申請した。

 ko君との待ち合わせの時間、午前8時半に間に合うように、僕は、市場近くの食堂で、朝食のトゥクパを食べてから、ko君が泊まっている宿、「モダン・セントラル」に着いたのは、約束の時間の5分前だった。
少し遅れて、ko君がやって来て、二人は宿の前に停車していたジープに乗り込んだ。
運転手兼ガイドと僕達二人の三人だ。

上:ツァング湖

左:ツァング湖へ行く途中に見た滝


天気は、あいにくの曇り空というか、霧に包まれている。
ジープは、まるで山を登るかのように、傾斜のある道路を走っている。
そのため、一気に標高が上がっているのが、わかる。
景色は、霧のため、ほとんど見えない状態だが、道路脇には、通学中の学生が歩いていた。

ツァング湖は、中国チベット自治区との国境が近いため、軍の施設が非常に多く、2箇所のチェック・ポストがあった。標高が上がるも、あいにくの霧で、遠くの景色は見えないが、森の中を走っている。
2回目のチェック・ポストでの休憩の時に、チャイを飲んだが、久しぶりに寒いと感じたので、温かいチャイが、とても美味しかった。
そして僕は、カバンから、ジャンパーを取り出して、着た。
このジャンパーを着るのは、チベット以来だ。あぁーチベットが懐かしい。

ジープは再び走り出し、ついに12,000フィート(3,600m)を越えた。
僕は、久しぶりの高地と急激に標高が上がったことに対して、高山病の症状がでるかもと心配していたが、そんなことは、杞憂に終わった。
身も心も、まだまだチベットのままだった。
ここまで標高が上がれば、僕は、チベットで見てきた、荒涼とした乾いた大地という風景を期待していたが、そんな風景は、どこにもなく、草木が生い茂る、キレイな緑溢れる風景が、広がっていた。

ツァング湖にて

 そして、ツァング湖に到着。
ツァング湖は、それほど大きな湖ではないが、軍事上の関係から、歩ける範囲が決まっていて、1周することは出来ない。
僕とko君は、湖付近を歩きながら、「ここ3,780mもあるのに、なんでこんなに、緑が溢れてんねんやろ。」
「あの山を越えたら、チベット自治区に入れるのか?行きてー!」
なんて言ったりしながら、植物の写真を撮ったり、お互いの記念撮影なんかしておりました。

しかし、そんな時間も長くは続かず、天気がしだいに悪くなってきた。
今日は、本当に霧が多く、湖も霧に隠されたり、ほんと天気が良くない。おまけに雨まで降ってきた。
僕達は、殺風景なバラック小屋のような、観光用のお土産屋や食堂が並んでいる所で、インスタント・ラーメンを食べ、チャイを飲み、天気が悪いので、1時間のトレッキングを中止して、僕達は、ツァング湖を後にすることにした。
ほんま、短い滞在でした。

 帰りのジープでは、僕が助手席にすわり、寝てました。
人に連れて行ってもらうツアーは、楽だが、面白みに欠けると、僕とko君は言い、途中のンゴル・ゴンパへ行くために、「後は、勝手に帰るから。」と、ジープを途中下車した。
ツアーは、ここで終わりだ。

ンゴル・ゴンパにて

僕とko君は、雨の中、ンゴル・ゴンパを目指して、傘を差しながら、歩いた。
晴れていれば、森林浴をしているかのような、気持ちの良い道路だが、あいにくの雨&霧。
それになんでか、傘を差しているにも関わらず、傘の中央部からの水漏れ。
「やっぱ中国製の傘は、アカンな。」なんて言いながら、時折すれ違う、制服姿の男女を見て、会話を弾ませていた。
そして歩くこと、数十分で、ンゴル・ゴンパに到着。
ゴンパの隣には、刑務所がある。

 ンゴル・ゴンパは、シッキム唯一のサキャ派のゴンパで、僧坊の壁は、ストライプのサキャ派カラーだった。お堂を見学して、事務所のような所で、ミルクティーをいただきながら、僧侶達とのちょっとした撮影会となった。
こういうとき、撮った写真をすぐに見せられる、デジカメは、便利で、みんなko君のデジカメを覗き込んで、喜んでいた。

帰りも雨の中、来た道を歩いて帰るが、あまりにも大雨のため、途中からタクシーに乗って帰った。
もうカバンの中も、服も、クツも、クツの中も、びしょ濡れでした。

ガントクの商店

 夕食は、ko君と一緒に、インドカレー屋で、チキンカレーを食べた。
この店は、35Rsか40Rsの値段で、肉以外は、食べ放題だが、チベットですっかり小食になってしまった僕は、おかわりはせず。
食後、二人で、M.G.MARGにある、ちょっとオシャレなバーへ。
1杯=40Rsのラムをロックで飲みながら、今日のことなど話しをしていると、二人のシッキム人と一緒に酒を飲むようになり、いろいろとお話をした。

午後10時、宿に戻ると、すでにシャッターは閉まっており、しょうがないと思いながらも、シャッターをドンドン!と叩いた。
シッキムの夜は、早いです。