プロローグ -イッチャイナ-

    東南アジアの旅から帰って来て、10ヶ月。
    僕はまた、旅に出ようとしている。

    東南アジアで出会った日本人達と話をしているとき、「次はどうするんですか?」と聞かれることが何度かあった。

    俺は「また、どっかに行くかもしれない。今回、東南アジアを旅したことによって、もっともっとアジアと言うところを知りたくなっていた。」と言っていた。

    それはウソではなく、本心だった。
    「もっとアジアを旅して、多くの人達と出会い、そして写真を撮ってみたい。」
    これは、そのうちにやってみたい。ただ、漠然とした絵空事であった。
    でも僕の気持ちとは裏腹に、こんなことを繰り返しても良いのだろうか?
    と言う、不安も当然あったし、新たな気持ちで社会生活を送ってみたい。と言う気持ちもあった。
    帰ってきた直後は、もう旅は当分の間、必要はない。と思っていたが、月日が経つにつれて、もう一度、アジアへ。

    やっぱり、今やらなければ・・・と言う気持ちが、強くなっていった。

    東南アジアの人達の純粋な笑顔。
    日本に帰って来てからも彼等の笑顔は俺の記憶の中で色褪せることなく、光を放ち続けている。
    日本では、何故か出会えることがない、その微笑み。
    日本で求めたくても求められない何かが僕を旅へと向かわせる。

    僕は前回の旅では、ただ流されて生きるのではない、生き方を見た。
    物質的に豊ではなくとも、こころ優しい人々に。
    悪いヤツもいたけども、そんなヤツ等との出会いも楽しみだ。
    「また会いたいよ、彼等に。」「また行きたいよ、アジアに」でも次はどこにしようか?
    なんて考えることはなかった。もう決まっている。次は中国だ。

    何故?中国なのか?
    東南アジアで出会った、たくさんの旅行者からの情報では中国は旅がしにくい。
    と言っていた人が多かった。しかしアジア最大の国土を有する中国。
    どんなところなのだ?

    テレビや本などで見聞きしているので、全く知らない国ではないが、自分の目で見てみたい。
    アジアと言う地域を俺は今、とても見てみたい。
    色々と悩んで旅に出た東南アジア旅行とは違う。
    今のうちに見てやろう。アジアを。そして記憶とフィルムに焼き付けよう。

    僕にとって今回の中国の旅は、前回の東南アジアの旅の続きのようなルートを考えていた。

    という理由で東南アジアに近い、中国南部、華南地方へ行くことに決定。
    先立つ物がなかなか貯まらなくて、長期間旅することは出来ませんが・・・
    運が良いのか悪いのか、旅立つ状況が出来上がった。

    今がチャンスだ「イッチャイナ!」