プロローグ-僕が旅に出た理由-

僕が旅に出た理由とは。
出発する数ヶ月前から、いや、もっと前からだったからかもしれないが、俺、今何やってんねやろ?これからどうしたいんやろ?
ある時を境に、自分自身が全くわからなくなった。
もちろん前から「旅に出たい。」という憧れは、持っていたが、その気持ちだけでは、僕は旅に出ることが出来なかった。

以前(旅立つ前)の仕事はダラダラ続けているだけで、自分にとっては無意味なことだったので、転職をしようと、行動をおこしている最中だったが、それもまた本心ではなかったような気がする。

そんなとき、友達が死んだ。彼の死によって、自分の中にあった。モヤモヤした気持ちの栓が抜け始めた。
色々やりたいことがあったと思う。でも死んでしまったのでもう何もできない。
人間は生きているうちに、やりたいことをやらなければならない。
これがまず最初のきっかけだった。

俺は、転職したかったのではなく、世界を見て、旅してみたいのだ。
それに気が付いた俺は、今まで憧れていた、旅をやってみたいと思い始めた。
旅関係の本は以前から読んでいたので、ますますその思いは強くなった。

しかし、年が明けても僕の心はくすぶっていて、なかなか先へ進めない自分がいた。
本当に行ってしまっていいんだろうか?帰ってきたら、どうなるんだろうか?
1ヶ月も日本を離れたことがない俺にとっては、3ヶ月も旅をする。ということが、果てしない時間に感じた。

しかし、今やらなければこれから先、チャンスが少なくなる。
どうしようか?こんな事を毎日考えていたけれども、あと一歩先へ進むことが出来ない自分が嫌いだった。

このままじゃ、これから先、僕は何もできない。自分の人生を先へ進めることができない臆病者になってしまう。昔、自分が大嫌いだった大人に近づいてしまっていた。

臆病者には、なりたくはない!
そう思い、これからのことは全く考えず、格安航空券を買いに行き、出発日を退職の翌日に決め、勢いにまかせて、日本を出て、旅に出た。

僕もいつもこんな事ばかり考えてはいなかったけれども東南アジアの人々はそんな僕の気持ちを知ることもなく、次々と襲いかかってきた。