タカイ!タカイ!蘇州

     俺を乗せたワゴン車は、旧市街から少し離れた二つ星ホテルへと到着した。
    蘇州の大観光地、留園にほど近いところに建っているホテルの名は『申江大酒店』。
    宿代は1泊=160元(約2400円)。
    俺が、上海の浦江飯店のドミトリーで知り合った日本人旅行者から聞いた話では、蘇州の宿はどこも値段が高く、安宿へ泊まった彼は、そこでノミ&ダニに総攻撃され悲惨だったと言う話しを思い出し、そんな経験をしたくはない僕は、ここにチェックインする事に決めた。

    「蘇州滞在は2泊だから、まぁいいだろう。今後切りつめていけばいい。」という考えだったが、これから先、沿岸部の都市の宿代がここの値段と、そう変わりはないと気づくのは、まだ先であった。

     何はともあれ、”水の都”蘇州に来ているのだから、観光しましょう。
    ここから近い観光地は『留園』。まずはそこへ行くことにした。入場料は20元(約310円)。
    ここは俺が蘇州に来て、最初の観光地だったため、なんのためらいもなく入場。
    『留園』は、蘇州四大名園の一つであるくらい素晴らしい庭園ではあるのだけれども、庭園を見に来たのか、人を見に来たのかと思うほどの、観光客が多すぎた。
    せっかく、名園に来ているのだから、空間を独り占めしたかった。

     さて、次はどこへ行こうか?
    僕は、前回の東南アジアの旅で買った、偽物ナイキのナップサックから、ガイドブックを取り出し、蘇州の地図を見た。

    蘇州は、外城河と言う、堀に囲まれた街であり、外堀沿いには城壁が所々に残っているようだ。
    僕が今居る留園は、外城河に囲まれた旧市街の外に位置している。

    僕は、堀に囲まれた街の中へ行くのは、明日にする事に決めて、堀の外の観光地を見てまわることに決めた。
    留園の近くには、西園と言う、庭園があるのですが、続けて庭園を見る気にはなれなくて、ここから3キロほど北にある、『虎丘』に行くことにした。

    上:留園 右:虎丘

     地図を見ると、虎丘路という名前の大きな通りが書かれているので、そこまで行けば、バスが出ているだろうと考え、留園路を通り、虎丘路へ。
    予想通り、バス停はあり、虎丘へ行くバスも出ている。
    しかし、待てども虎丘へ行くバスは来ず、時間を無駄にしたくはない僕は、通りを走っていた自動三輪車を止め、それに乗って(3元)虎丘手前まで行ってもらい、
    あとは徒歩で丘の麓から見えていた塔へと向かった。
    しかし!入場料は40元。日本円にすると約600円。これはいくらなんでも高い!
    これって、本当に中国人を対象にした金額設定なのでしょうか?

     中国には、かつて外国人料金というものがあったが、今はもう廃止されている。
    宿泊においては、外国人が泊まれる宿は、決まっているが、観光地の入場料においては、外国人だろうが中国人だろうが、同じだ。
    僕は係員に、身振り手振りで「なんでこんなに入場料が高いの?」と質問すると、今は、花の芸術祭が行われているから、少し高いらしい。
    入場券を見ると、虎丘花芸術祭と書いてある。
    本来はいくらなんだろうと、ガイドブックを見ると、35元だそうだ。5元しか変わらないのか。
    やはり街全体が観光地となっている蘇州でのあらゆる入場料は高いのだ。
    僕は、貧乏人の金銭感覚は諦め、ここに来ることは、もう2度とないだろうと入場。
    塔は奉納してある剣を取ったためなのか、本当に傾いていました。


     虎丘の麓は、たくさんの店があり、ここをブラブラするのが楽しかった。
    床屋もたくさんあったので、髪の毛がウットーシー俺は、どんな髪型にされるのかもわからずに、手をチョキにして、髪の毛を切るジェスチャーをして「髪を切ってくれ」と頼みました。
    店員もこんな街にいきなり外国人が来たので、困ったのかなと思いましたが、そんなことはなく、茶髪で短髪の女性は、俺の髪をチョキチョキと切っていきました。
    「さっ!できたわよ。」と鏡を見た俺は「うぅーん、メッチャ7・3分けやん。これが人民カットなのでしょうか?」
    いくら知り合いがいない外国でも、この髪型は恥ずかしくて、外を歩けない。
    俺は店を出ると、思いっきり髪をクシャクシャにした。
    ほんでもって値段は6元(約100円)これはヤスイ!ヤスイ!

     翌日は『北寺塔』をめざし、路地裏をブラブラと歩いておりましたが、クサイ。
    かつての水郷都市蘇州の路地裏の堀は、いつからかわかりませんが、完全にドブ川になっています。
    しかし民家は古都らしく、情緒あふれ、散策のしがいがありました。
    そんな道を歩き、今日最初の目的地、北寺塔に到着。

    入場料15元(約230円)を払って、塔に登ることにした。
    塔の高さは、ガイドブックによれば76mらしいが、南宋時代(1127〜1279年)に建立されたこの塔には、あたりまえだがエレベーターなんぞ無く、果てしなく続くかと思われそうな階段を登らなくてはならず、これがとてもしんどかったが、ここからの眺めは最高!
    蘇州の街、全体を見渡すことができました。
    高くて恐かったけれども、今日は中国に来て、初の快晴なので気持ちいい。

    左:北寺塔 右:路地裏の水堀

     次に俺が向かったのは、蘇州博物館のつもりでしたが、その隣の『拙政園』に行ってしまった。
    俺は、きっとここからも博物館に行けるものだと勘違いをして、38元(約590円)払って入場。
    『拙政園』も蘇州を代表する蘇州四大名園の一つであるが、正直言って、もう庭園は見飽きた。
    1つ見たら、もう充分って感じです。庭園素人の俺は、庭園を見る回数を重ねるごとに、感動が薄れてゆくだけだ。
    そして、とても人が多いので、ゆっくりボッケーと、静寂に身を置くこともできません。

     拙政園を出ると、人力三輪車の兄ちゃんが近寄って来たので、俺が次に行きたい、『盤門』までは遠いので値段交渉をして(3元)行ってもらうことにしたが、何故か?盤門へ行く途中にある『藕園』で止まり、
    「ここは良いから見ときなって」感じで、連れて来られ、渋々入場。(25元)
    僕は、あてもなく庭園内をブラブラするが、やっぱり庭園なんて、もう見たくもない。
    しかしここでは、船に乗ることができた。(船代は入場料込み)
    しかし!徒歩で歩いてもクサイと感じる堀を小舟に乗って進むのだから、たまったもんじゃありません。
    この罰ゲームのような、船乗りはわずか数分でしたが、「乗るんじゃなかったー」
    こんなところにも「行くんじゃなかったー」

    そして、やっと目的地の『盤門』へ。
    『盤門』は四角い城内の四隅にある場所の一つで、蘇州で唯一現存している城門。
    35元(540円)の入場料は高いので、悩みましたが、ここは行ってみたい所だったので入場。
    ここは、昔の蘇州の城壁が残っているから、中に入って見てみたかったのですが、今じゃすっかり、テーマパーク状態。
    中に入って損しました。風情も情緒も木っ端みじんに砕け散っていました。
    外から城壁沿いを歩いているほうが良かったです。
    青空ガラクタ市もたくさんあったし。

    路地裏にて

     この後、僕は『双塔』と言う、2つの塔が建ってある所へも行きましたが、もう入場する気はなく、首を上げて眺めただけで通り過ぎた。
    疲れた。観光なんて、がんばってすることじゃないな。
    数をこなした分、心に残った風景も、上書き保存されて、初めに見たものが消去されたような気がする。

     昨日、今日と蘇州の観光地を欲張って、観光しましたが、欲張ったぶん出費も大きかったです。
    ここの観光地の入場料の高さも、俺にとっては予想外でした。2日間で200元以上もかかってしまいました。
    もし、また蘇州に来ることがあれば、大通りから少し外れた、路地をブラブラしたいと思います。

    さぁ、明日は上海に戻ろう。