3度目のチェン・マイ

     タイの首都バンコクから、北へ約700km、列車に乗って約11時間、
    タイ北部の中心の都市、チェン・マイに到着したのは、午後9時になろうとしていた。
    予定では午後7時に到着予定だったが、列車が予定よりも約2時間遅れたのが原因だ。
    僕が、この街に来るのは今回で3度目なので、何時に到着しようが気負いはない。

     ガイドブックを持たない僕が、夜に街に到着するメリットは何もなく、以前の記憶をたよりに、以前泊まっていたロイヤル・ゲストハウスへ。

     翌日の朝、中国ビザを取るために、旅行会社へ。
    通常は中4日だが、土日を挟むために、中6日になってしまった。値段もバンコクよりも300Bも高くなる。
    中国ビザは、バンコクで取得してもよかったのですが、ラオスビザも申請していたので、それから中国ビザだと、かなり長い間、バンコクに滞在しなければならない。
    もしくは、パスポートを受け取りに、またバンコクに戻ってこなければならない。
    陸路で北上をする僕にとっては、ここチェン・マイで取得したほうが、都合がいいので、値段は高いが、チェン・マイで中国ビザを取ることにした。1600B(約4,500円)

    「それにしても6日間は長いな。どうしようか?」
    以前に来たことのある、チェン・マイには、それほど長居するつもりはない。
    バンコクにいるよりかは、チェン・マイの方が好きなので、苦痛にはならないと思うが・・・
    1日はツアーに参加するのも、いいかも。でも残りの日はどう過ごそうか?
    そんなことを考えながら、首長族(カレン族)に会いに行く1日ツアーの手配を済まし、ゲストハウスへ向かって、トボトボ歩いていた。

    ワット・プラ・シン

     チェン・マイも以前来たときより、少しですが華やかになっている。
    目立った建物の変化は特になかったものの、ネット・カフェは以前もたくさんあったが、さらにその数が増しているし、レストランやカフェなども数を増している。
    物価もバンコクに比べれば多少、安いような気もするし、ほんと旅行者のオアシスのような街だ。

     ナイト・マーケットはどうなっているのだろうか?
    以前出会った店の女の子はまだいるのだろうか?
    気になった僕は、ゲストハウスの部屋を出発し、ターペー・ロードを通り、ナイト・マーケットへ向かった。
    ナイト・マーケットは以前よりも、店の数が多くなり、活気も増していた。
    売っている物は、特に以前とは変わりなく、アクセサリー、スタンド照明、タイ北方少数民族の服やアクセサリー、お香、Tシャツ、コピーCDなどなど。
    僕は、それらの商品を眺めながら、以前出会った女の子の店へと向かった。

    このあたりの店なんですが、とウロウロするが、彼女と会うことはなかった。
    もう一回、見てみるが、やっぱりいない。
    1軒、閉まっている店があったので、場所的にもここが、彼女の店だろう。
    今日だけ閉まっているのか?それともずっと閉まっているのか?
    どちらなのか僕には分からない。

    ナイトマーケットにて

     僕はナイト・マーケットで何も買うこともなく、ただブラブラとしていると、やっぱり!また会ったか!スイス人のマッツォ君です。
    実は、僕がミャンマーから帰ってきて、3日後にカオサンで出会ったのです。
    そのとき彼と、ミングォンの時と同じように、次はどこに行くんだ?と話をしていて、お互いに「次は、チェン・マイだ。」と言っていたので、そしたらお互いに「また会うな。」と話していたが、まさか本当に会うとは・・・
    こんだけ偶然が重なると、なんとなく気持ち悪いです。
    やっぱアンタが、今回の運命の旅人だ。

    そんなマッツォ君も、ここチェン・マイで中国のビザ待ちだそうだ。
    僕は、僕と同じ状況にあるマッツォ君に「ビザ待ちの間、どうするの?」と聞いた。
    マッツォ君は、「僕はその間に、メー・サリン、メー・ホン・ソーン、パイへ行く。」と言う。
    おっー!なんて、行動的なんだマッツォ君は!感心ですね。
    ところで、メー・ホン・ソーンは、だいたい場所は分かるが、それ以外はどこにあるの?と訪ね、僕は今朝、旅行会社でもらった地図をマッツォ君に見せて、印をつけてもらった。

    なるほど。チェン・マイの左側の地域を一周するようなコースなのか。
    メー・ホン・ソーンには興味があったし、僕も行ってみよう。

    これでビザ待ちの6日間が埋まった。
    サンキュー!マッツォ君。
    また、どこかで会うことでしょう。




    首長族に会いに行こう

     今日は、テレビなんかでよく紹介される民族、首長族に会いに行くために、1日ツアーに参加した。
    午前6時30分起床は、今の僕にとっては、かなりキツイものがありましたが、無事起きることが出来、近くのコンビニで朝食のパンとジュースを買い、ゲストハウスのロビーとなっている1階で朝食をとりながら、ツアー会社のミニバスが来るのを待っていた。

     今回のツアーの参加者は、僕を含めて9人です。
    日本人大学生の2人もいるので、そのうち話が出来ればと思っている。
    車はチェン・マイの街を抜け、約30分ほど走り、最初の目的地の植物園に着いた。
    僕としては、首長族の所へ早く行きたいのですが、ツアーなのでしょうがない。

    園内には、さまざまと言うには、数は少ないが花が咲いている。
    それに温室には、綺麗とは言い難いが、蝶も飛んでいた。
    みなさん、あっさりとここを見学し終えて、次に向かった先は、Chiang Dao(チェン・ダオ)の洞窟だ。
    植物園から、約1時間もかけて、わざわざ洞窟になんて来る価値があるのでしょうか?
    洞窟や鍾乳洞がドロドロとした造形が苦手な僕には、全く理解できない。

    (左)植物園にて (右)古いパゴダ

     ここから昼食を食べる場所まで、さらに1時間、車で走った。
    少しずつ首長族がいる場所に近づいているのは、分かるのですが、けっこう時間がかかるのですね。
    昼休憩はたっぷり1時間。決しておいしいとは言えない料理を食べながら、今回のツアー参加者達と知っている限りの英単語を駆使しての会話。
    欧米人達とは、やっぱりあまり喋ることは出来なかったが、日本人大学生達とは、このころから話をするようになった。
    彼らは、明日チェン・マイを発ち、陸路で一気にバンコクを通過し、南の島、ピーピー島へ行くらしいが、果たして1日で行くことが出来るのか?超過密スケジュールです。

     昼食終了後は、いよいよお待ちかねの本日のメイン、首長族に会いに出発!
    それは、ここから車で約1時間。一山越えれば、もうミャンマーってとこまで来た所にあった。
    僕達ツアー客が訪れたのは、首長族の村ではなく、各北方少数民族のお土産マーケットだ。
    お土産マーケットと言っても、竹と葉で出来た小さな家が数棟あるだけで、たくさんの観光客が訪れていて、活気があるわけではなく、僕達以外に客はおらず、閑散としている。
    空の青さと、暑さも、さらにこれを引き立てている。

     そんな北方少数民族のお土産マーケットの大半は首長族が占めていた。
    首長族は、カレン族の一員だそうだ。と僕に教えてくれたのは、日本人大学生だった。
    お土産マーケットを少し歩くと、さっそくお目にかかりました。首長族の女性に。
    初めて見た彼女の姿に、僕自身がもっと驚くのかと想像していたのですが、案外、冷静です。
    きっとテレビや本などで、見たことがあったから、こんなに驚かないのだろう。

    (上)お土産マーケットの首長族の少女
    (右)笑顔になった首長族の少女

     僕は、少女が店番をしている木と葉で作られた一軒のお土産屋へ行き、少女の隣に座った。
    少女に、笑顔はない。
    それもそうだ。毎日毎日、僕みたいな旅行者が人珍しさのために、ここへ来ているのだから。
    「歳はいくつ?」と聞いてみた。12才だと少女は指を立てて教えてくれた。
    この少女にも、首には真鍮の太い針金が巻かれている。
    今の時代、こんな行為はもはや意味を持たないと僕は思うが、少女達は、民族の誇りで、現在も首を長くしているのか?それとも現実を生き抜く手段としてなのか?
    写真を撮ってもいいか?と尋ねると、少女は頷いたが、やはりニコリともしない。

    タイ語を少し喋ることが出来るという日本人大学生が、他の店の少女に話しかけてみたが、通じないと言う。
    このあたりの民族は、独自の言葉を使っているので、少女にはまだ、それしか通じないのだろう。
    しかし、年輩の首長族の女性は「ありがとう」「こんにちは」「さよなら」と日本語が返ってくる。
    こんなところにまで日本語が!と少しショックな僕達日本人3人。

    お土産と彼女たち以外は、特に見るものはなく、僕達ツアー客は1時間もいることもなく、ここを後にすることになった。
    僕は最後にもう一度、さっきの少女の所へ行き、写真を撮った。
    やっと笑ってくれた。