初シェア〜ウドンサイにて〜
トラックの荷台にビニールの屋根を取り付けただけのバスは、いや、バスと呼ぶには相応しくないトラックバスは、ほぼ定刻通りの午前8時にルアンパバーンの南バスターミナルを出発し、ラオス北部の山々を縫うように造られたアスファルト道を快調に走り、ラオス北部の街、ウドンサイへと向かっている。
ビニールの屋根を支えている、細い鉄製のフレームの大きな隙間からは、冷たい風が吹き込み、荷台に乗った僕達、乗客を寒さに震え上がらせていた。
日本よりも南に位置する、東南アジアだが、朝晩は思っていた以上に寒いし、ましてやトラックの荷台に乗っていると、冷たい風による寒さが、更に骨身にしみる。
僕の隣に座っている女性は、半袖の服を着ているが、彼女は僕以上に体を震わせていた。
「寒いですね」と長袖の服を着ている僕は、隣のTシャツ姿の日本人女性旅行者のyokoさんの方を向いて言う。
yokoさんとは、このバスの中で知り合った。最初は日本人ぽくなく、ちょっと分からなかったのですが、彼女がカバンから、日本語のガイドブックを取り出し、読んでいたので、ウドンサイの情報が何もない僕は、「もし良ければ、見せてください。」と言って、本を見せてもらい、話をするようになった。
僕は、ウドンサイから中国へ行きますが、yokoさんは、ラオスをいろいろと見てまわり、タイへと行くようだ。
トラックバスの荷台の寒さは変わらないが、話をしていると、少しだけ寒さが和らいだ。
やがてトラックバスは、いくつかの村を通り越し、午後1時前にウドンサイのバスターミナルに到着した。
ウドンサイは、いままでの寒さが嘘のように暑い。
僕とyokoさんは、「どうせ安い宿へ行くんでしょ。そしたら一緒に探そうよ。」というような感じで、一緒に宿探しを始めた。
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ウドンサイにて
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ウドンサイの街は、たいして大きくはないが、ここは中国へ行く拠点となる街だけあって、中国人も多く、宿泊施設は中国式の旅社などが多い。こういう旅社は安くて、汚いが定番です。
たまにキレイな旅社もあるが、そういう所は、高いです。
僕は、ラオスはここで終わりなので、今持っている金で、なんとかしたいと思っているので、出費は抑えたい。
何軒目かに見た宿が、二人部屋で、1ベッド=10,000kipだったので、「どうしますか?」と相談した。
「部屋は汚いが、値段は魅力的だし、二人部屋で知らない人と居るよりかは、知っている人と言うか、お互い日本人なので言葉も通じるし、ここに泊まりませんか?」とyokoさんに言うと、「私はかまわないよ。」と言うことなので、二人でここにチェック・イン。
宿代が、あまりにも安くすんだこともあり、僕とyokoさんは近くの食堂で、ちょっとだけリッチな昼食。
ここラオスにも、僕が以前の東南アジア旅行で大好きになった、ホビロン(孵化しかけのゆで卵)がありました。
いやぁー、こんな所でこんな物を食べることが出来るなんて、うれしい。
その他にもおかずを数品頼み、1人=17,000kip(約200円)でした。
その後、僕は1人で市場を散策した。
yokoさんのガイドブックによると、ここはたくさんの少数民族の人々がいて、活気があると書いてあったのですが、みなさん、巻きスカートやTシャツ姿などの普通の服装なので、誰が何族かなんて、全く分かりませんでした。
たまに、民族衣装の人もいましたが、僕の予想をはるかに超えて、人は少なかった。
僕は、雨上がりのため、水たまりがたくさん出来た、ぬかるんだ市場内を歩き、外へ出た。
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(左)市場にて (右)バスターミナル付近にて
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その帰り道の通りにあった散髪屋へ。
僕は髪の毛をミャンマーへ行く前のバンコクで切ったのですが、それから、すでに2ヶ月も経っているため、だいぶん伸びてきたので、ここいらで髪を切っておこう。
どんな髪型になるのかなんて分かりませんが、散髪代は5,000kip。かなり安いです。
僕は、ここの散髪屋のオッチャンに英語で「ショートカット」と言うと、オッチャンはニコニコ頷き、手にバリカンを取って、またニコニコとして、バリカンのスイッチを入れた。
そして、その手に持たれた、けたたましい音を放つバリカン野郎は、僕の後頭部へとゆっくり近づいてくる。
そして、“ウィーーン”、“ザクッ”、“ガガガッ”「あぁぁー!ちょっと待った!」オッチャン、それ刈りすぎちゃうんか?
しかし、時すでに遅しと言うか、この状態では情けない髪型なので、俺はもうオッチャンに全権を委ねることにした。
僕の髪の毛は、バリカンによって次々と刈られていってます。
僕は、鏡に映っている自分の半泣きの顔を見ながら、ここで散髪をしたことを大後悔していた。
しかしオッチャンは、俺のそんな顔に全く、情けを入れることなく、愉快痛快に俺の大事な髪の毛を刈ってゆく。
そして約10分後。俺の耳元でうなっていたバリカン野郎の音が消えた。
この音が消えたのには、深い理由があったのです。
そう、この音が消えたということは、もう僕の頭には刈ることができる髪の毛がないことを意味していた。
そしてもう一つ、オッチャン自慢のヘアースタイルが完成したことも意味していた。
僕の髪型は、限りなく丸坊主に近い、角刈り。まるで僕の頭蓋骨を縁取るように髪が残っている。
あの時、バリカンが最初に侵攻してきたときに、僕に断る勇気があれば、こんなことにならなかったのに・・・
今更、後悔してもしかたがなく、僕は早く髪が伸びることを願って、逃げるようにここを立ち去った。
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ウドンサイの丘の上の仏塔にて
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僕が、逃げるようにゲストハウスへ向かって歩いていると、僕の今の同居人、yokoさんとばったり。
「けっこう、イイじゃん!」なんて慰めてくれますが、風を頭皮がモロに感じるこの感覚が僕には許せなかった。
二人で食堂へ行き、ラオスコーヒーを飲みながら、僕は1人で歩いているときに見つけたゲストハウスの話をした。
「今の所と同じ値段で、今の所よりもかなりキレイな宿を見つけたので、明日、宿替えしませんか?」と。
yokoさんは、先ほどと同じように「私はかまわないよ。」と言うことなので、明日、宿を替えることにした。
二人で夕食を食べた後、宿へ帰り、僕はここのとても汚い、共同トイレ&シャワー室を掃除。
こんな汚いところで、トイレもシャワーもしたくない。土でドロドロの床をキレイに洗い流し、ここにいる蚊を全部殺して、気持ちよくシャワーを浴びた。
いつもは、一人孤独に部屋で日記を書いたり、ガイドブックを読んだりしていたのですが、今夜は、久しぶりに、人と夜遅くまで、話をすることが出来た。
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