ベトナムの洗礼(ハノイ)

 いよいよ念願のベトナムへ行く日がやって来ました。
『Vietnam-ベトナム』僕が東南アジアを旅すると決めて、一番行ってみたかった国だ。
旅に出る前、仕事をしている時に『サイゴンの昼下がり』と言う本を読み、または写真を見て、僕は、まだ見ぬ異国の地「ベトナム」に魅せられていた。
青空の下、アオザイを着た女性や騒々しそうな、サイゴンの街など。
他にも、図書館でベトナムの本や写真集を借りて来ては、見入っていた。
そんなベトナムへ行けるのだ。それも今日。

こんなふうに、僕は内心興奮ぎみですが、まだ旅も始まったばかりなので、このような興奮は、やがて不安にもなり、そして緊張にもなっていった。
ミニバスの出発がAM11:00ぐらいなので、それまでベトナムのガイドブックを読みながら朝食。
11時前に、空港へ行くワゴン車が来た。「えっ!俺一人だけ?」

そんなことはなかった。カオサン通りで次々と旅行者を拾ってゆく。
そして、とうとう車内は満席になった。

空港に着き、僕はベトナム航空のカウンターを調べ、空港内をブラブラしていると、ミニバスで一緒だった日本人青年と出会い、二人で外でタバコを吸いながら、話をしていた。
さらに暑いので、喫茶店へ行きそこで、1時間くらい旅のことや日本でのことなどの話をしていた。
そして僕らは別れ、僕はベトナム(ハノイ)行きの飛行機に乗り込んだ。

タイの空港にて 右:ハノイの街にて

 ベトナムの首都ハノイのノイ・バイ空港に到着した時は、外はすっかり夜になっており、最悪にも雨が降っていた。
入国審査を終え、荷物を受け取り外に出て、バスで街中まで行くつもりでしたが、空港職員が、もう夜なのでバスよりタクシーの方が良い。と言うので、僕は、US8$払い、タクシーに乗った。

ベトナムVND(ドン)ではなく、USドルで支払いなのか。
僕は空港で日本円からベトナムVND(ドン)に両替をしたら、ものすごくレートが悪かった。
たしか1万円が850,000VNDだった。
今思うと、あんな所で両替なんかするんじゃなかった。これには後悔しております。
(相場はだいたい1$=14,500VND前後です。)

しかし、この時はここの貨幣価値はこんなものなのかと、勝手に思いこんでいた。
タクシーの窓から初めて見るハノイの街は、ここは首都だというのにネオンが少ない、車も少ない。
これが一国の首都なのかと思うほど、殺風景だった。これが僕のハノイの第一印象だ。

 そしてタクシーは何故か一軒のミニホテルに到着。
ベトナムには、小さなホテル。ミニ・ホテルっていうものがあるのは、僕はすでに知っていたし、ハノイでは最初からミニホテルに泊まろうと思っていたから部屋を見せてもらうことにしたが、メッチャきれい。清潔。広い。バンコクの時とは大違いです。
値段は、いくらかと聞くと、290,000VND。日本円に換算するといくらだ?

ベトナムへ初めて来た僕が、0の多いベトナムVNDに着いていけるわけがなく、わからん。

しかし疲れていたので一泊しようかなと思った。値引きができるか聞いてみたが安くはならず、しかも宿の兄ちゃんに、勝手に5日間の計画まで立てられた。
「あなたは明日はハノイ市内観光をして、2、3日目はツアーに参加。
4日目は自由行動。5日目にフエに行く。」こんな具合に勝手に予定をたてられた。

左:宿の屋上から見たハノイ 右:ハノイの宿の部屋

勝手に決めるな!俺は一泊だけでええねん!と言っても日本語なので通じない。
電車の切符もいらん!しかしミニホテルのスタッフもあきらめない。
「フエ行きの切符はいい席を用意するし、ぼったくってない」と向こうも反論。
ガイドブックで調べてみたけど、この席だったらボッタクリにはならない。

あっそう。
でも俺は一泊だけでいい。その他はいらないとまた言う。そんな感じの話を一時間ほどして、結局一泊+フエ行きの切符で落ち着いた。

 俺はバイクで別館に連れて行かされチェックイン。
部屋はとても広く、きれい、A/C付きでUBまで付いている。おまけにお湯も出る。
床はタイル貼りで、部屋の家具はベトナムアンティークです。
部屋でこの部屋の値段を調べると、約20US$だった。あかん!高すぎる。
12〜15US$がハノイでの俺の範囲内だ。これはちょっと豪華すぎます。
ガイドブックで他のミニホテルを調べてみると、ここが載っていた。そこにはUS$15〜と書いている。
明日15$の部屋に変えてもらおう。できなかったら、変わればいい。

しかしこのプリンス・ホテルと言う名のミニホテル。
部屋はとてもいいが、オーナー&スタッフがサイテーな奴らだとは
海外一人旅初めての僕には、この時は知る由もなかった。

ハノイのトォワン

 今日、僕はUS15$の部屋が空いたので部屋を変わった。
ホテルの少年の運転でバイク二人乗りをして、本館へ移動した。朝からハノイの街はウルサイです。
”ブッブッー!”とクラクションがけたたましく響く。

ホテルでベトナム初の朝食を食べた。(朝食は宿代込みです。)
フォー・ボーと言ったヌードルスープだがこれがメッチャうまい。
ホテルで朝食といっても、ホテルのスタッフが近所の屋台で買ってきてくれるだけだけども。
食べ終わると、コーヒーや果物をもってきてくれた。あれ食べないか、これ食べないかと言うぐあいだ。

そして、一日ツアーに行かないか?と、しつこく言ってくるので、一日だけツアーに行くことにしたが、なんでUS70$やねん!と聞くと、「一日ツアーはレンタカーで行くから高くなるんだ。」と説明されそこのホテルの情報ノートを見させられた。
日本語しか読めなかったが、そこにはみんなUS70$で行ってるようだ。

しかしハノイに来てから、まだ2日目ですが、なんかメッチャ金を使っているような気がする。
思いっ切り、ペースを乱されている自分に気が付いた。
ホテル代の先払いは納得するが、フエ行きのチケットは不安やし、なんでツアーがUS70$もすんねん。
みなさん、この金額で行っているようだが納得いかない。ツアーに行くのは、気が引ける。
でも金払ってしまったし・・・どうしよう。

そして、さらに今日は一人のベトナム人青年に付きまとわれ、俺の旅のペースは、完全に破壊された。

こいつが、トォワン 右:トォワンのバイクに乗って、街を走る。

ヤツとは路上で出会った。僕がブラブラ歩いていると、「ポストカード、地図やガイドブックを買わへんか?」と声をかけてきた。
僕はすでに相場の3倍くらいの値段で地図を買ってしまっていたので「いらない。」と言ったが
ヤツはしつこく俺に付きまとい、「ハノイは初めてか?」などと聞いてくる。
俺も「初めてだ」と正直に答えてしまったのがいけなかった。
そしたらヤツは「ガイドしてやるよ。一時間、4US$でどうだ?」とポストカード売りからガイドマンに商売を替え、さらにしつこく付きまとう。

二人はお互い平行線のまま、しばらく歩いていた。

ちょうどタバコがきれたので、売店でタバコを買おうとしたら何故かヤツが買ってくれた。
そしてヤツは勝手にガイドを始め、ホアン・キエム湖周辺の寺院を案内しはじめた。

俺もハノイは今日で2日目やし、昨日の夜に着いたから、まだこの街はよく分からないので、ガイドをしてくれとは言わず、勝手に付いていくことにした。
お互い歩き疲れたのでカフェで休憩することにしたが、支払いは俺。
この時、ヤツの名前を聞いた。名前はトォワン。俺と歳が近かった。

カフェを出ると、トォワンが飯を食べないかと言ってくる。
なんで俺がオマエと飯くわなあかんねん!「NO!」と言ったがしつこい。
レストランに行こうなどと、ふざけたことを言うので、だんだんムカツイテきた。
そんな俺の気持ちを察したのか、コイツは「ベトナム人と同じ物を食べにいこう!チープ、チープ」と言い出した。
俺もそれには興味があったので、コイツに案内してもらうことにした。


そして、一軒のボロボロで汚い食堂に到着。
ここでどんな物が食えるんだろう?という気持ちより、ここの場所がどこだか全く分からないことが不安だった。
しまった!もう頼みの綱はうっとしいトォワンだけだ。

料理はあんまり美味しくなく、いや不味かった。しかも高かった。
コイツがボッタクリしたのだ。店の人が不思議な顔をして料金を受け取っていたのでその場で気付くべきだった。でもこのときの俺は、0(ゼロ)が多いVNDの計算にまだ脳ミソが着いてきてなかった。たぶん、4倍くらいの金額を払ったと思う。
方向音痴極まりない俺は、ここがどかだかサッパリ分からない。

俺は、彼に1時間(US4$)のガイドを依頼し、帰りにホテルまで送ってもらうことにした。
ヤツの知人のバイクで、ホー・チ・ミン博物館や軍事博物館などを観光した。
入場料は一回だけヤツが払った。
いろいろ見てしまったので結局2時間半くらい観光してしまった。

 コイツもチョーシに乗って、次はどこに行く?カフェで休憩するか?などとほざく。
ハッキリ言って、結構おごらされたので俺もかなりムカツイテきていたので、「もうええ。ホテルに帰る」と言って、渋々ヤツも承諾。
やっとホテル前に到着。するとコイツは「フィフティーダラー(US50$)」と言い、俺の前に手を差し出した。

ハノイに来てから、ペースをすっかり乱されて、金を使わされていた俺は、とうとうブチッ!っと、”イッテ”しまいました。
俺はコイツに「なんで俺がオマエに50US$も払わなあかんねん!
アホか!1時間=4US$やから10US$ちゃうんか!」
と言い返し、「オマエ昼飯代もボッタクッタやろ!」と大阪弁と英語を混ぜて、怒りを込めて怒鳴った。
俺もすっかり出来上がっていたので、かなりの喧嘩口調である。
数分ヤツと言い争いをして、ヤツが折れ、渋々帰って行った。


 それから、多分4日後。コイツにまた会った。今度は俺が、コイツからボッタクってやろうと思い、
ヤツに近づき、バイクで「ここまで行きたいねん」と言ってバイクにまたがり出発。
コイツに初めに言った目的地はウソなので、本当に行きたい目的地に近づいたところで、スピードが落ちたときにジャンプしバイクから飛び降りて、バイバイ。
ヤツもやられたな。という顔をして追ってくることはなかった。

ベトナムはボッタクリだと本で読んだりして分かっていたが、前途多難な旅になりそうだ。

 旅をする人は、その国の人に対して、どう接して良いか、わからないときもある。
それが、初の海外一人旅だったら、なおさらである。
でも、どこの国へ行っても、何人であっても、人は人であり、俺は俺である。
人間の基本的なつきあいは、どこの国においても同じだ。
遠慮することなんかない。言いたいことは、言えばいい。
1日ツアーやフエ行きのチケットは、もうしょうがないけども、
そのことに気づいた俺は、やっと肩の力を抜いて、旅ができるようになった気がする。


*ちなみに地図の相場は5000VND〜6000VND。
*一時間の観光は外国人ならば2US$〜3US$です。