ハロー!アンコール・ワット

 翌日、俺はゲストハウスを変えることにした。
まず最初にAnoさんが泊まっているゲストハウスへ行ってみた。
US3$にしてはいいじゃございませんか。そのまま『TA・SOM』にチェックイン。

さっそく水シャワーを浴びて、サッパリしたところで、アンコール・ワットへレッツ・ゴー!
くっー!いいねぇー!このズッシリとした重量感。そして繊細な彫刻達。惚れてしまいました。
アンコール・ワットは12世紀末から13世紀初頭にかけて、クメール王朝によって建造された寺院です。

そして今では世界文化遺産になっています。

午前中は逆光になるため、あんまり写真は撮らないでいようと思っていたが、どうしても気持ちを抑えることが出来ずに、バシバシ撮っていた。
よくこんなん作り上げたものだ。神業としか思えない。
俺はクメール人の英知の結晶にただ酔いしれていた。


乾期(5月)のカンボジアは、昼間はとても暑いので、出歩くことはなくゲストハウスで休み、そして涼しくなってきた午後3時くらいから、もう一回アンコール・ワットに行った。
今日は1日中アンコール・ワットです。

夕方のアンコール・ワットは午前中とは違う表情をしていた。
あの繊細な彫刻達はさらに立体感を増し、表情が穏やかだ。そして建造物全体の輪郭もクッキリとしている。
回廊を歩いていると、光が射し込んで来て、光と影の計算されたような演出。絶妙です。
今日一日中、アンコール・ワットを満喫することが出来て、大満足です。

晩ご飯はシェムリ・アップの屋台街でAnoさんと食事。
しかし最近の寝不足のせいか、あまり食が進まない。何故だかプノンペン後半からあまり眠れません。
屋台にはテレビが置いてあって、そこでジェット・リーと金城武が共演している映画を見て、二人して釘付け。

「この二人って、共演していたのか。」
そこにカンボジアへ一緒に入国し、プノンペンでも一緒に過ごした、tomy君が今日、シェム・リアップに到着し合流して、俺たち3人は、マニアックな話で盛り上がり、シェム・リアップの夜はすっかり更けていった。


 翌日向かったのはアンコール・トムのバイヨンと王宮跡。
アンコール・ワットのチェック・ポイントからの道は森林浴をしているかのように気持ちが良い。
宗教の思想を形にしたバイヨンはとても見応えがあり、写真で見たことがあったあの顔が、たくさんあり、こうなっていたのかと感心するだけではなく、この世界観に圧倒されていた。

今日一発目のバイヨン見学ですっかり集中力を使い切ってしまった俺は、王宮はなんとなくしか見ることが出来なかった。
あかん暑い。次はいつ来ることができるかわからないが、次の遺跡に行くことにした。
次に行ったのがトマノンとチャウ・サイ・テボーダという遺跡。ここは規模も小さく、人もほとんどいない。
どっちかの遺跡が修復作業中だったが、あの優雅で繊細な彫刻(浮き彫り)は省略されていた。

次に行ったタケウでは、カンボジアの少女が俺に「オッハー!」と言って、からかってきますが、誰がこんな言葉を教えてん!

タケウはゴツゴツとした階段状の遺跡で、まるで岩山を登っているようだった。
上の方まで登り、座っていると風が冷たくて、気持ちよかったので、少しここからの景色を眺めていた。

それにしてもアンコール・ワットといい、アンコール・トム、バイヨンなどたくさんの遺跡達は、いったいどれくらいの時間と人と金を使って、作り上げたんだろう?
彫刻一つでも莫大な時間がかかってると思うし、石を一つ積み上げるのにも、時間がかかったと思う。
きっと時間も人も金も俺のちっぽけな想像をゆうに越してるに違いない。

バイヨン(上)とタケウ(右)

 そして、いよいよ本日のメイン、お待ちかねのタ・プロームに到着。
ここは、ぜひ行ってみたかった遺跡の一つである。
ここは発見されたままの状態で保存されているらしいが、遺跡が完全に木々に飲み込まれております。
樹木にスッポリと覆われ、朽ち果てている風景は、まさに神秘的だった。
まるで”天空の城ラピュタ”のように、ひっそりと遺跡は本来の機能を失い、自然の成長と時間の経過に身体を委ねているようだ。
でもそんなタ・プロームは俺の脳みそを刺激し、久々に長時間の見学。

午後、いったんゲストハウスに戻った俺は、日本人数人とおしゃべりをしたあと、またアンコール・ワットへ。やっぱりアンタが一番かっこいい。
出会って3日目ですっかり惚れ込んでしまいました。
すっかりアンコール・ワットに魅了されてしまった俺は、ここの絵を描こうとペンを取った。
しかし、描き始めると、腕にはハエが数匹、とまったり、蚊に数カ所も刺されたりと、悪戦苦闘の末、あきらめた。

宿へ帰るとビックリしたことに、ベトナムのニャ・チャン、ホーチミンで出会った、運命の旅人nori君と、ここシェム・リアップでも再会した。
俺は、nori君と二人で飯を食いに行ったが、体の調子がおもわしくない。
食欲がなく、早めに帰ったが、今日も眠れない。

タ・プローム遺跡

サンライズとサンセット

 昨日バイタクのおっさんに「サンライズはどうするんだ?」と聞かれ、起きられるか不安だったが「OK!行く。」と答えてしまったため、今日は朝4時半起きです。
東南アジアといえども、まだ日が昇っていないため、少し寒いです。

俺が朝焼けを見るために選んだ地は、プノン・バケンだ。
俺の予想では、ここからの朝焼けが、よく写真なんかで見る朝焼けにちがいないと思っていた。
そう!アンコール・ワットの背後から太陽が昇ってくるって感じの。

プノン・バケンに到着したが、誰もいません。おまけにまだ暗い。
ハアハア言いながら、頂上に到着すると今にも太陽が昇ってきそうなほどに、あたりがほのかに明るくなって来ていた。
俺はここプノン・バケンから見る朝焼けを独り占めできるのかー。

プノン・バケンからの日の出

深い紫色の空が、少しずつ薄紫色へと変わり、ゆっくりと青空に変わっていく。
なんて贅沢な時間なんだろうと一人感動していると、「ワン!ワン!」と犬がやって来ました。
「なんで、こんな所に犬が、おるんや?」
俺は犬がオバケノQ太郎なみに苦手なので、これは恐怖の瞬間でした。

しかし、これまでの旅でこういう犬のあつかい方を会得した俺は、ヤツが近寄って来ると、石を投げて、おっぱらい。さらに投げ続けるとヤツは退散した。
これでやっと落ち着いて見ることが出来ます。
朝焼けはとってもキレイで感動的でした。これは早起きの価値あり。
でも太陽はアンコール・ワットの背後からは昇らなかった。

帰りにアンコール・ワットにHELLO!と言い、ゲストハウスに戻って再び就寝。
こんな風に、昼寝をしているから、夜に眠られへんのか?
昼からというか、夕方にまたアンコール・ワットへ。
俺は3日券を買っていたので、今日で最後だ。何度見てもアンタはかっこいい。
アンコール・ワットに向かって参道を歩いていると、右側の池の側に一ノ瀬泰造の墓がある。


夕日を見るにはまだ早いなとブラブラしていると、
Anoさんがいたので声をかけ、一緒に見学することにした。
回廊の壁画を見て、この感触は触らなければわからんなぁー。
触ってみようかとしたら、現地のガイドに「サワラナイデー!」と日本語で怒られてしまったが、悪いヤツもいるからねぇ。

 俺らは日本での話をしたり、旅の今後の話しをしたり、アンコール・ワットの話をしながら、アンコール・ワットの塔のような部分を目指し上っていった。
塔の見晴らしの良い場所を見つけ、太陽が沈む姿をみた俺達は、「あぁーアンコール・ワットも今日で最後か。」と、カンボジアの大平原に沈む太陽をアンコール・ワットと共に浴びながら、見つめ続けた。