カルマパ17世に謁見。

     旅立ちから187日目。
    待ちに待った土曜日に、やっとなった。
    この日のために、ダラムサラに滞在していた僕にとっては、この一週間は、長かったです。
    朝9時に、ko君と他の日本人2人と待ち合わせをして、4人で、ロウワー・ダラムサラのバス停まで、歩いて行った。

    ロウワー・ダラムサラは、インド人の街。
    チベット人の姿も、見るけれども、インド人が圧倒的に多い。
    バスが来て、「カルマパ!カルマパ!」と発すると、このバスに乗りなって感じで、運チャンが頷き、僕達は、バスに乗り込んだ。運賃は5Rs。

    僕達は、カルマパ17世の滞在先が、ダラムサラ近くだと思っていたので、予想以上に、長い時間、バスに揺られた。そして標高も下がったので、インド低地のような暑さだ。
    バスを降り、しばらく歩くと、山々をバックにして、大きなゴンパが建っていた。
    カルマパ17世は現在、ダラムサラの下の方のこのゲルク派のゴンパに仮住まいをしているらしいです。
    とオッサンが教えてくれました。
    カルマパはカギュ派です。

    カルマパ17世が、チベット自治区から亡命して、4年。
    いまだ、仮住まいだったとは。
    シッキムのルムテク・ゴンパには、行かないのだろうか?

    カルマパ17世と謁見したゴンパ

     午後2時前から受付が始まり、パスポートを提示し、荷物検査を受け、お堂の中へ。
    それにしても、謁見する人数の多さには、驚いた。
    数十人くらいかと、思っていたが、100名以上は、いる感じだった。
    お堂の中でしばらくの間待ち、そしてついにカルマパ17世の登場!

    カルマパ17世の顔を写真や絵葉書などで、見ていましたので、誰がカルマパなのかは、すぐに分かりましたが、あの小さくて、かわいい少年は、青年になり、メッチャ、オッサン顔になっていた。
    そして、予想以上に体格がガッチリとしていました。
    ほんでちょっと猫背でした。

    カルマパ17世の姿が見えると、一瞬にして、堂内は静まり返り、全員が起立。
    両手を合わせる人や五体投地をする人。カルマパは一言も喋らず、笑顔一つ見せることなく、謁見に来た人々に赤い紐を手渡していった。
    僕も「トゥジャチェ」と言い、赤い紐をいただきました。
    個人的に会えれば良いのですが、ただの旅行者にそんなことはできません。

    僕は、赤い紐をもらった後も、ずっとカルマパ17世を見続けた。
    これで終わりだ。俺のチベットの旅は。
    この半年間の出来事が、走馬燈のように、頭を駆けめぐる。
    随分、チベットにも詳しくなったし、旅立つ前よりも、チベットの魅力にとりつかれた。
    そして、カルマパ17世の存在も知った。

    ダラムサラにて

     あなたの姿を見たのは、ほんの十数分程度だったが、あなたに会えて、とても嬉しかったです。
    この旅が、少しだけ報われたような気持ちにもなった。
    ダライラマには会えませんでしたが、これで心おきなく、ダラムサラを離れることができます。
    明日、夜行バスでデリーへ。いよいよ帰国に向かいます。





    デリー、そしてインド出国

     カルマパ17世に謁見した翌日の夜行バスで、俺は、デリーへ向かった。
    ダラムサラから、デリーまでは、約12時間。
    これくらいの移動時間なら、いつもは、長く感じないが、ツーリストバスだったため、話しかけてくるインド人もいなければ、クーラーが効いている車内は、暑くも感じず、窓を開けたりも出来ず、いつもと勝手が違う移動に、疲れを感じた。

    早朝7時頃にデリーに着いたバスは、メインバザールの外れにある酒屋に面した大通りで停まった。
    ここからだと、地理を把握しているので、リュックを背負い、足早にメインバザールへと向かい、以前泊まっていた、『スター・パレス』へと苦もなくたどり着くことが出来た。

    部屋を出て、すぐに旅行会社へ向かい、バンコク行きの飛行機の手配を済ませた。
    当初の計画では、デリーから日本へ向かう予定だったが、ちょうどネパールで出会った、旅人達が、偶然にも4人も、バンコクにいることがわかり、俺もバンコクへ向かうことにした。
    旅で出会った人達と、日本で会うことは、難しい。
    日本もけっこう、広いし、日本では、お互いの事情もあり、旅で出会った人とは、旅で出会うのが良い。

    航空券の手配を済ました後は、お土産を買ったりと、買い物にあけくれた。
    デリーは、相変わらず暑かったが、1ヶ月前、俺が、ラッダクへ向かう前よりかは、少しだけ涼しくなっていた。以前行った、映画館で映画を見たりと、一人のデリー、最後のインドを自分なりに楽しくすごした。

    ジュース屋
    オートリキシャー

     そして、旅立ちから191日目。
    今日がインド最終日でございます。
    朝飯は、バタートースト。昼飯はターリー。晩飯はスパゲッティーでした。
    別に、インド最終日だからといって、感慨深いものもなく、早く、みんながいる、タイに行きたいなぁと思っています。かと言って、インドが嫌いなわけではありません。
    こんな楽しい国、あんまないかも。
    写真もすごく撮りやすかったし、人々も、適度にかまってくれて、寂しいときの癒しにもなりました。
    ウザイと感じるときもあったが、本音でぶつかれば、スカッと爽快。
    それに映画も音楽も大好きです。

    インドには約2ヶ月間、旅行していましたが、その内の半分以上はチベット文化圏(シッキム、ラダック)の旅だったので、みなが思い描いているようなインド世界には、あんまり行ってません。インドの低地で行ったのは、ブッダガヤー、バラナシ、アーグラー、デリーです。一番印象的な街は、バラナシでした。

    チベット文化圏の旅は、シッキム、ラダックとタイプの違う土地柄で、どっちも楽しかった。
    森に囲まれたシッキムもみずみずしく、気持ちよかったし、自然を身近に感じながらの散歩やゴンパ巡りは、心癒される物がありました。
    荒涼とした、ラダックの大地とゴンパは、チベットを彷彿とさせ、あのときの感覚が、よみがえり、懐かしさ、それに、チベット以上の強烈な風景にも出会えた。

    まぁ、そういう事で、インドはさまざまな文化と風景がある、楽しい国でした。
    もっと、もっと、インドは行きたいところが、あるけれども、今回は、これで充分だ。
    さよならインド、最高にエンターテイメントな国。
    明日の今ごろは、バンコクで生ビールを絶対に飲んでやる!

    デリーにて